この1ヶ月、都内の一般病院でCOVID-19の診療にわずかですが携わったので、その経験を記します。なお、私は呼吸器や感染症の専門医ではないので、あくまで一内科医としての経験、意見であり所属する医療機関を代表するものではありません。
— 北川/脳神経内科医/開業準備中 (@kitagawaneuro) 2020年3月21日
2月に入ってから連日、クルーズ船の乗客から陽性者が多数報告され、都立病院にも収容されていると聞いていましたが、それが限界に近づいており一般病院でも受け入れを要請されるとの噂が流れてきました。
— 北川/脳神経内科医/開業準備中 (@kitagawaneuro) 2020年3月21日
2月中旬に陰圧室を持っているような病院のICT担当者が招集され、正式に患者の受け入れが要請されたため、翌日から患者さんを移動させ1日で感染者用の病棟が準備されました。当初、どんどん入院してくると思っていましたが、実際はぽつりぽつりという感じで、これが最も意外でした。
— 北川/脳神経内科医/開業準備中 (@kitagawaneuro) 2020年3月21日
それほど入院数が多くなかった理由としては、受け入れ病院の数が増え分散されたこと、当院はICUがないため、軽症から中等症の方に限られたことなどがあると思います。河野大臣がツイートしていましたが、自衛隊病院は多くの患者さんを受け入れています。
— 北川/脳神経内科医/開業準備中 (@kitagawaneuro) 2020年3月21日
日本の検査数が少ないと報道されていますが、確かに当初は「なぜこの人を検査してくれないのか?」といったケースもありましたが、現在では概ね中等度以上の患者はほとんど検査されており、その実数に大きな乖離はないように思います。
— 北川/脳神経内科医/開業準備中 (@kitagawaneuro) 2020年3月21日
一方、無症候やほとんど症状がないような人は検査があまりされていないので、検査数を増やせばそうした症例数は増えると思われます。山に例えれば裾野の部分は大きくなると思いますが、7-8合目以上の規模は概ね把握されているのが実感です。
— 北川/脳神経内科医/開業準備中 (@kitagawaneuro) 2020年3月21日
COVID-19を疑う根拠が非常に乏しい人に検査をしても事前確率が低く、あまり意味がありません。一方、普通ではない肺炎像があったり、濃厚接触者は事前確率が高く、こうした人達は逆に積極的に検査はされている印象です。
— 北川/脳神経内科医/開業準備中 (@kitagawaneuro) 2020年3月21日
COVID-19の臨床的特徴は「非常に肺炎を起こしやすい」ということではないでしょうか。インフルエンザ患者を診ていても、細菌性肺炎の合併は時々あってもウィルス性肺炎自体はかなり稀です。しかしCOVID-19では、通常なら風邪程度の症状でもCTを撮影すると、複数の肺炎像が見られます。
— 北川/脳神経内科医/開業準備中 (@kitagawaneuro) 2020年3月21日
すでに報告されているようにこのCT像がかなり特異的です。胸膜にへばりつくようなすりガラス、あるいは網目状の陰影が複数見られます。通常の細菌性肺炎とはかなり異なる印象です。他院からCOVID-19の鑑別のために患者さんが紹介されてくるのですが、CTでスクリーニングをおこない、
— 北川/脳神経内科医/開業準備中 (@kitagawaneuro) 2020年3月21日
怪しい影があればPCR検査をおこなっているのが現状です。幸いCTスキャンが2台あるため、一般患者と分けて検査することが可能でした。またCTでは明らかな多発性陰影でも、レントゲンではかなり分かりにくく、それだけでは否定できません。
— 北川/脳神経内科医/開業準備中 (@kitagawaneuro) 2020年3月21日
このような状況になって思うのは、パンデミックの際には病院や医療システムに余裕が必要だという事です。病床に余裕があるからこそ、専用の病棟を作れますし、外来にしても普段使わないエリアがないと、患者の動線を分けることができません。
— 北川/脳神経内科医/開業準備中 (@kitagawaneuro) 2020年3月21日
国全体の医療システムにも余裕がないと、パンデミックへの対応は難しいことを実感します。一つの病院に限界近い患者が殺到すれば、院内発症(アウトブレイク)がおこり、さらなる患者の増加を引き起こすことは確実で、まさにイタリアでこうしたことが起こっているのだと思います。
— 北川/脳神経内科医/開業準備中 (@kitagawaneuro) 2020年3月21日
この1ヶ月間で、新規患者数はほぼ横ばいでどんどん増えているという印象はありませんので、様々な自粛要請やリモートワークへの移行などの措置がある程度有効なのだろうと感じます。ただ、このまま収束していくかどうかは、現場の末端にいる医師にはわかりません。
— 北川/脳神経内科医/開業準備中 (@kitagawaneuro) 2020年3月21日
ここまで一気に書いたので、少し補足します。民間の検査会社でもPCR検査は可能になりましたが、現時点では行政機関のほうが結果が帰ってくるのが早いため、そちらに依頼しています。検査の適応については、行政側と現場の医師の間に、
— 北川/脳神経内科医/開業準備中 (@kitagawaneuro) 2020年3月21日
「こうした症例は検査すべき」といった暗黙の合意ができつつあり当初よりスムーズになっているようです。現在、クルーズ船の患者さんが少しずつ退院し始めており、今月末から来月にかけて国内発症者の退院も増えていくと思われます。
— 北川/脳神経内科医/開業準備中 (@kitagawaneuro) 2020年3月21日
受け例が決まった時は、私も含めすべての職員は不安だったと思います。ただ、結局はどこかが受け入れなければ患者さんが溢れてしまいます。声を大にして言いたいのは、COVID-19を受け入れても病院に大きな収入が入るわけではありません。
— 北川/脳神経内科医/開業準備中 (@kitagawaneuro) 2020年3月21日
むしろ入院・外来患者ともに減っており経営上は大きなダメージがあります。マスクも潤沢にあるわけではなく、ギリギリでやっているのが現状です。ここで院内感染でもおこって病院を閉鎖するようなことがあれば、経営上はさらに大きな打撃を受けることになりますが、
— 北川/脳神経内科医/開業準備中 (@kitagawaneuro) 2020年3月21日
現状ではそれが補填されるわけでもありません。
当初、東京のような過密都市では爆発的に患者が増えるかと思いましたが、そうでもありません(現場の実感としてもそうです)。京都も患者数は比較的少ないようですが、どちらも他人によそよそしい街だからでしょうか?(冗談です)。— 北川/脳神経内科医/開業準備中 (@kitagawaneuro) 2020年3月21日
先程も書きましたが、私はこのウィルスを完全に封じ込めることは不可能だと思います。我々にできるのは、現在の医療システムが対応かのうなレベルに患者数をとどめておくことです。一方、経済活動をいつまでも制限したり鎖国のようなこと続ければ、経済の破綻により死ぬ人が出てくることは間違いなく、
— 北川/脳神経内科医/開業準備中 (@kitagawaneuro) 2020年3月21日
国は、感染者数を一定以下にとどめつつ経済活動を少しずつ元に戻していくという難しい舵取りを迫られていくのでしょう。
一部に、集団免疫ができれば大丈夫という意見があるようですが、このウィルスについては未知のことが多く、私はその考え方については懐疑的とは言いませんが賛成もできません。— 北川/脳神経内科医/開業準備中 (@kitagawaneuro) 2020年3月21日
私は3月末に退職するのですが(1年前から決まっていたことなのです)、COVID-19の診療にあたっている末端の現場の状況をお伝えしたく長々とツイートしました。
— 北川/脳神経内科医/開業準備中 (@kitagawaneuro) 2020年3月21日
私の体験と考えはあくまで、都心部の一般病院でのそれですので、地域が違えばまた異なる状況であることは言うまでもありません。
— 北川/脳神経内科医/開業準備中 (@kitagawaneuro) 2020年3月21日
失礼します。質問です。
東京都は、Dr.が必要と認めた検査依頼をほとんど断り、少数しか検査していないと聞きます。
また、東京都のpcr検査数、結果がきちんと発表されていないとか?
都知事の対策に係るコメントが、他自治体に比べ少なく不安です。
本当のところは如何なのでしょう。— toshiozi (@toshiozi) 2020年3月21日
それに関しては医師会から官邸要請があり休校の要請があったぐらいで大幅に改善しています。
それに比例して感染者数の1日の増加数も増えています。
ちなみに医師会の調査では300件ぐらい保健所の検査拒否があったらしいです。— George (@mQbIRnyacUdeOit) 2020年3月21日