週刊ベースボール 廣岡達朗が奥川投手を批判

夏の甲子園は履正社高が星稜高を下して優勝した。

今大会を見ていて気づいたのは、選手が試合中に水分を摂り過ぎることと、スタミナ不足である。

ラグビーやサッカーのようにノンストップで走りっぱなしの競技なら、休憩時間に水分を補給するのも分かる。しかし、野球は「間」のあるスポーツだ。そこでガブガブと必要以上の水分を摂ったらどうなるか。集中力がなくなるのだ。野球経験のある人ならうなずけるだろう。

暑さの中、ユニフォームが汗でグッショリ濡れるほど練習をやった上で、新しいユニフォームに着替えて、水分を摂ってからまたグラウンドに戻っていく。それが正規の考えだ。経験のない人間に限って、体にいいからと言って水分補給を奨励する。その結果、集中力を欠くどころかスタミナがなくなってしまう。実際に、今夏は試合中に足がつった選手を何人か見た。ということは、根本的な練習不足ということである。

こういうことを書くと暑さ対策が最優先、もし何かあったらどう責任を取るのだと、よってたかって誰か一人に集中砲火を浴びせるのがいまの日本という社会だ。そういう大衆に限って責任観念がない。暑さ対策はあくまで大人の論理。10代の若者の体力というのはそれで壊れるほどヤワではない。十分に免疫力がある。

とにかく、いまの日本は“タラレバ”の段階から、マイナス思考に陥り過ぎている。だから、こうすればケガをしないだろうという消極的な考えがはびこってしまう。リスクを取らない考え方は一見なるほどと思うが、実は人間の可能性をこれほどバカにしていることはない。人間というのは偉大なもので、「やれ」と言ったらやれるのだ。

そこの部分のポテンシャルを信じ切ることができないから、岩手大会で大船渡高の佐々木朗希が登板回避などというケースが起こってしまう。あれはもうナンセンスである。甲子園は高校球児にとって二度と訪れない夢。その夢を現実に変えるためにみんな必死に頑張っているのだから、監督もこういうことをしたら問題になるのではないかなどと考える必要はないのだ。
……………………………………………………
さて、今夏の甲子園で注目度No.1、星稜の奥川恭伸投手についても言及しておきたい。

私がひとつ気になったのは、マウンドでの笑い過ぎだ。笑うことは必ずしも悪いことではない。緊張を緩和させてくれる。しかし、真剣にプレーすべきときに笑ってはいけない。

奥川は優秀な投手だけに、そのことだけは言っておきたい。

最後に、高校球界ではいま球数制限が異常なほど話題になっている。しかし、それ以前にやるべきことがあるのではないかというのが私の考えだ。

『週刊ベースボール』2019年9月9日号 廣岡達朗