医学部受験を決めたのは父が癌になってパニックになった母を安心させようと思ったからだ。天才型ではなかったので高2の冬からは勉強以外のことは全て辞めた。成績はある程度伸びたが高3の夏の模試では医学部に全く歯が立たないレベルだった。
— 女医ちゃん (@ninninjoy) April 22, 2022
模試の結果を見てから全くご飯が食べられなくなった。スープを飲むだけで腹痛、嘔気。楽しいことなど何もなかった。当時私の家族はみんないっぱいいっぱいで私のことは『自分だけ飄々と勉強している』と言っていた。私も自分の体調不良は言う必要がないと思っていた。
— 女医ちゃん (@ninninjoy) April 22, 2022
8月、部活の同期がご飯に誘ってくれた。そこでも飲み物以外摂取できなかった。心配したその友人が部活の顧問に相談してくれたらしい。8月末に2学期が始まり、その初日に顧問に指導室へ呼び出された。
— 女医ちゃん (@ninninjoy) April 22, 2022
部活の仕事で全く役に立たなかったわたしは顧問との連絡係という伝書鳩の役割を与えられていた。そのため高2の時にはよく顧問と話していた。久しぶりに見た顧問の顔だったが『こんな顔してたっけ』となんの感慨も湧かなかった。とにかく勉強したくて早く話を終わらせたかった。
— 女医ちゃん (@ninninjoy) April 22, 2022
おそらく顧問もその雰囲気を悟っていたのだと思う。突然『君は明るい』と脈絡なく話し始めた。顧問は芸術科目の先生だったので、人を惹きつけようとする芸術家の無意識のうちの独特な切り口だったのかもしれない。
— 女医ちゃん (@ninninjoy) April 22, 2022
顧問は続けた。『君から受けるどんな報告も聞くのが楽しみだった。面白いし、何より君がいつも笑っていた。』少しだけ私は俯いた。私が役に立たないためだけにわざわざ作られた役職を褒められたのが恥ずかしかった。
— 女医ちゃん (@ninninjoy) April 22, 2022
『医学部を受けるそうだね』
顧問は話の核心に迫ろうとしていた。正直受験の話に触れられたくなかったわたしは『2ヵ年計画です!』と笑ってごまかした。顧問は少しだけ間を置いてゆっくりわたしに語りかけた。— 女医ちゃん (@ninninjoy) April 22, 2022
『君は明るい。
おじいちゃん、おばあちゃんに笑って大丈夫だよー!と言って回って皆が安心する。君を見ることが治療になる。
将来そういう医者になりなさい。君は医者に向いている』— 女医ちゃん (@ninninjoy) April 22, 2022
一字一句覚えていると言えたらかっこいいがおそらく脳内補正が入っているだろう。ただ、この1分程度のセリフを受けて明らかに気持ちが軽くなったことは覚えている。
その後、食事もいつのまにか摂ることができるようになり、がむしゃらに勉強を続けて一校だけ合格した医学部に入学した。— 女医ちゃん (@ninninjoy) April 22, 2022
先生はわたしの卒業の年に定年退職した。メールや電話番号は知らないので父が死去した年以外では年賀状のやり取りを続け、細々と関係は繋がっていた。2021年、先生からの年賀状は届かなかった。年賀状が負担になってきていたのかもしれない。2022年に年賀状じまいの挨拶を送った。
— 女医ちゃん (@ninninjoy) April 22, 2022
2022年1月。先生から年賀状が届いたが、筆跡が違った。よく見ると奥様からの年賀状だった。内容も普段と異なっていた。奥様はLINEをしているようでLINEのIDが記載されていた。IDには先生の名前が入っていて少し笑ってしまった。
— 女医ちゃん (@ninninjoy) April 22, 2022
3月。私は白衣を着て、LINEのビデオ通話ボタンを押した。奥様と初めて挨拶をした。小柄で綺麗な女性だった。
奥様が画面を横に傾けた。
『お父さん、●●さんよ』
10年以上ぶりに先生の顔を見て私は『こんな顔をしていたっけ』と深い感慨にふけった。先生は返事をせず、画面にも視線を向けなかった。— 女医ちゃん (@ninninjoy) April 22, 2022
『ご無沙汰しております。高校時代にお世話になった●●です。』声をかけたが、先生は返事をしなかった。私も声が出なかった。その瞬間にふと、指導室の先生のセリフと表情を思い出した。
『先生、大丈夫だよ』
セリフは言えたが教えを守らず私は笑えず涙を流していた。— 女医ちゃん (@ninninjoy) April 22, 2022
僕は医者でもなんでもない根拠ない思い込みですが。人は、大切な記憶ほど手前にストックしとくのです。だから、大切なことから忘れていくのです。先生は貴方のことを大切に思っていたのでしょうね。
— ひろ (@peasemile1) April 23, 2022
思わず書き込みしてしまいました。思い出は誰も奪えません。あなただけのモノです。そしてあなたが消そうとしても、あなたの中に残り続けるでしょう。だって、それは紛れもない、あなた自身だから。あなたのお仕事はとても大切なものです。頑張ってください。
— Sukhoi-30 (@hjmsrjp) April 23, 2022
泣いてしまいました。
小学校教員をしています。
子どもに寄り添い、思いを後押しできる先生でありたいと強く思いました。— ふじにゃんせんせい (@miniminie083) April 23, 2022