【濃厚接触者の定義の変更点】
4/20に保健所が積極的疫学調査の対象とする濃厚接触者の定義が変更となりました。新型コロナウイルスに関する知見が得られたことによります。
変更点をまとめたので参考にしてください。 pic.twitter.com/vxGrpAWi2m
— 新型コロナクラスター対策専門家 (@ClusterJapan) 2020年4月28日
積極的疫学調査実施要領における濃厚接触者の定義変更等に関するQ&A(2020年4月22日)
国立感染症研究所感染症疫学センター
2020年4月27日掲載
Q1 濃厚接触者の定義がどのように変わったのですか
主に以下の2点を変更しました。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染者と接触した日のはじまりを「発病した日」から「発病した日の2日前」に
濃厚接触と判断する目安を「2メートル以内の接触」から「1メートル以内かつ15分以上の接触」に
Q2 定義が変更された理由を教えてください
国内外のCOVID-19に関して、サーベイランスをより適切に行う上で大切な知見が集積されてきたことを踏まえ、定義を変更しました。
Q3 どのような根拠に基づいて変更したのですか
WHOの3月20日付け「世界におけるCOVID-19サーベイランスに関する暫定ガイダンス(Global surveillance for COVID-19 caused by human infection with COVID-19 virus Interim guidance 20 March 2020)」を参考にしています。WHOの変更をうけて、これまでの国内の疫学調査の結果や海外からの知見を含めて検討し、定義の変更をおこないました。
Q4 1メートル以上の距離での会話や、15分以内の会話では感染しないということでしょうか。
感染しやすい状況については、徐々に分かってきましたが、感染しないことを保証する条件についてはよく分かっていません。
感染リスクを下げるための効果的な手段に、飛沫感染対策としてのマスクの着用や、接触感染対策としての手指衛生(適切な手洗いや手指消毒用アルコールによる手指消毒)があります。また、三密(密集・密接・密閉)を避けることも感染リスクを下げる手段であり、これらの手段を最大限に執ることで、可能な限り感染リスクを軽減することが重要です。
Q5 定義の変更は、いつから適用になりますか
行政が行う積極的疫学調査における対応については、自治体ごとにご判断ください。既に行動歴に関する調査を終了している確定例に、追加調査を行う必要はないと考えています。
Q6 定義の変更の運用上のポイントについて
新型コロナウイルス感染症を疑う症状として列挙した症状のうち、中心をなすのは従来通りに発熱及び咳・呼吸困難などの急性の呼吸器症状、です。これらの症状を中心に、発症した2日前から隔離開始までの間、を感染可能期間とご判断ください。
なお、これまで国内では複数の事例調査より、実際に発症した方において、無症状期の患者より感染したと考えられた患者は決して多くはありません。そのため、無症状期は主要な感染時期ではないと考えています。また、国内ではこれまで多くの自治体で詳細な聞き取りが既になされており、かなり早い段階での感染可能期間の設定のもとに、正確な接触者調査が行われてきたことも付記したいと思います。今回の改訂は、知見が集積されてきたことにより、特にクラスター対策が有効な段階にある地域においては、接触者調査の精度をさらに高めることにつながると期待されます。
Q7 その他
・定義の変更に伴い、部屋などの消毒も患者が発症する2日前時点に遡って行う必要がありますか
最近の知見として、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の環境における残存時間として、プラスチックやステンレスの表面では72時間まで、などの情報があります(N Engl J Med 2020, 382:1564-1567)。これらを参考にしつつ、患者が発症した日からの時間的経過を踏まえて環境の消毒を検討してください。例として、患者の最後の使用から3日間より長く経過した部屋であれば、理論的には通常の清掃と換気をよくする程度で良いと思われます。患者の最後の使用から3日間を経過していない部屋であれば、その部屋は消毒の対象として良いでしょう。ただし、環境そのものから感染が成立したと考えられる例は決して多くはありませんので、過度に神経質になる必要はありません。