閉所恐怖症の人間が座席の選べないイベントで真ん中の席に当選してしまうということ

 閉所恐怖症、および閉所不安によるパニック障害。文字どおり閉所が恐怖です。
自力ですぐに出られない場所に恐怖を感じ、激しい動悸や過呼吸といった発作を起こしてしまうことがあります。
 イベント会場の真ん中付近の席は鬼門です。映画館なら自分で通路側を選べますが、お席をご用意してもらう身ではそんなワガママは通用しません。イベントに当選すると、まず大抵の人は舞台に近いかどうかをポイントに自分の座席を確認すると思いますが、閉所恐怖症の人間は「すぐに出られる通路側かどうか」を気にして調べます。
 そして通路側に近ければそのまま喜びを噛みしめてイベントを心待ちにしますが、真ん中の席だったときは頭を悩ませることになります。
 真ん中の席の何が怖いの?とたまに聞かれますが、静まり返ったイベント会場ですぐに出られないことが恐怖です。もちろん、それで死ぬわけではないことはわかっています。ですが、中央の座席に座っていると

今すぐこの席からは出られないんだな

5~6人の方に足と荷物を避けてもらわないと出られないな…

もし急に具合悪くなったらどうしよう

えっ待ってこんなど真ん中の席で吐いたり過呼吸になったりでもしたらクソ迷惑野郎じゃん!?

ウワッ本当に気持ち悪くなってきたどうしよう!

やばいやばい息ができない死ぬ苦しい助けて~おかあちゃ~ん!!!

 という思考の流れから、脳が「ここにいたら死ぬそ!」と誤作動を起こし、ハザード状態になってしまうのです。閉所恐怖症の人間は、そんな迷惑をかけないため、すぐに出られる通路側の席への交換を願っています。事前に友人や知人と交換が成立すれば一番良いのですが、そううまくはいかないので、私は当日なるベく自分の席より見辛い通路側の方へ声を掛けさせていただくことがあります。
 声を掛けられた方は大抵ものっすごく怪訝そうな顔をされます。そりゃあいきなり良席に交換してほしいと言われたら「そこ、不正に入手した席なんじゃねえの?」という疑惑が浮かぶでしょう。わかります。チケ〇ヤンが滅びても転売ヤーは滅びない。しかし、世の中には本当に、ただ真ん中の席が怖くて通路側の席に座りたいだけの人間もいることを知ってもらいたいのです。
 閉所恐怖症といっても、混雑したイべントやらライブやらに行ける程度です。会場にいる時点で「たいしたことない閉所恐怖症」かもしれません。そんな「たいしたことない閉所恐怖症」の私ですが、不安のあまり、酒と精神安定剤をちゃんぽんし、楽しみにしていたイベント中ずっと眠ってしまったことがあります。交換してもらえず、すごすごとイベン卜会場を後にしたこともあります。
「閉所恐怖症なので、もしよかったら、〇列〇番の真ん中の席と交換してもらえませんか?」
 閉所恐怖症だから譲れよ!という圧では決してありません。通路側が好きな方は断ってくださって全然構いません。ただ座席交換をお願いした際、条件があえば交換してくれる方が増えると、閉所恐怖症およびパニック障害の人間の過剰な不安も少し減りますのでひとつよろしく頼みます、って話でした。