睡眠不足が連日続くとさらに生産性は低下する

 睡眠不足は、疲労や心身の健康リスクを上げるだけでなく、作業能率を低下させ、生産性の低下、事故やヒューマンエラーの危険性を高める可能性がある。健康成人を対象にした研究では、人間が十分に覚醒して作業を行うことが可能なのは起床後12~13時間が限界であり、起床後15時間以上では酒気帯び運転と同じ程度の作業能率まで低下することが示
されている。
 睡眠不足が連日続くと、作業能率はさらに低下する可能性がある。健康な成人を対象にした介入研究では、自然に目が覚めるまでの十分な睡眠時間が確保されると、作業能率は安定しているが、その時間よりも睡眠時間が短く制限されると、作業能率は日が経つにつれ低下していくことが示されている。また、これらの研究では、客観的な検査では作業能率が低下しているにも関わらず、自分ではそれほど強い眠気を感じていない場合が多いことも示されている。
 忙しい職場では、睡眠時間を削って働くこともあるかもしれないが、そのようなことが続くと、知らず知らずのうちに作業能率が低下している可能性がある。

 健康成人を対象にした研究では、6~7日間睡眠不足が続くと、その後3日間、十分な睡眠時間を確保しても、日中の作業能率は十分に回復しないことが示されている。日本では、平日の睡眠不足を補うために、週末に睡眠をまとめてとる「寝だめ」をする人が存在する。「寝だめ」は作業効率の改善のためには、ある程度有効であることがいくつかの介入研究で示されてはいるが、これらの結果は、睡眠不足が続いて蓄積されると、「寝だめ」だけでは睡眠不足に伴う作業能率の回復には不十分であることを示している。また、週末の過度の寝すぎは、逆に夜間の睡眠を妨げて、月曜日や火曜日の日中の眠気や疲労につながる可能性があることにも注意が必要である。睡眠不足による疲労の蓄積を防ぐためには、毎日十分な睡眠時間の確保に努めることが大切である。