動物実験の結果はあてにならない

「健康寿命を延ばす」という長寿法を紹介するとき、動物実験の結果にもとづいて解説している健康情報をよくみかけます。
「カロリー制限が長寿遺伝子をオンにする」というのも、動物実験の結果にもとづいた結論です。
しかし、長寿法において、動物実験の結果は参考にはできません。
動物実験によって、「カロリー制限が若返りを導いた」という結果が明らかにされたところで、それをそのまま人間にあてはめることはできないのです。
なぜならば、人間と動物では寿命のあり方がまるで違うからです。

生物の世界では、生殖能力を失ったら死を迎えるのが自然の摂理です。

チンパンジーのメスは、生理が終わるとまもなく死んでいきます。
動物実験でよく使われるネズミ類も、生殖能力を失ったら死んでしまいます。

しかし、人間は違います。
生殖能力を失ったのちも、倍近い歳月を生き続けます

2016年の調査では、日本人女性の平均寿命は87.14歳、男性は80.98歳でした。
これに対して生殖能力の寿命は、女性の場合、閉経が50歳前後に訪れます。
男性も人知れず努力すれば70歳以降も子どもをつくれますが、ふつうは50歳を境に生殖機能は衰えます。

野生の生物は、生殖能力と寿命の長さが相関しているのに、人間だけが生殖能力を失っても長い歳月を生きることが許されているのです。

なぜなのでしょうか。

そこには「子どもを育てる」ことが関係してきます。
動物の赤ちゃんは、誕生後すぐに立ち上がり、歩き出します。
ところが、人間の赤ちゃんは、10ヶ月間胎内で育てられたのちに誕生し、その後、立ち上がるまでに少なくとも、10ヶ月月以上もかかります。

誕生後、1年近くも寝たきりのままなのは、人間の赤ちゃんだけです。

これは、脳が異常に発達してしまった結果、起こる現象の一つと考えられます。
人間の脳が巨大化したために、胎内で10ヶ月以上過ごすと頭が大きくなりすぎて、子宮から出られなくなってしまうのです。

生まれた後、すぐに自ら母親のお乳に吸いつける動物の赤ちゃんに対し、人間の赤ちゃんは、呼吸する以外のすべてで親の手を必要とします。

1人の赤ちゃんを育てる苦労は並大抵ではありません。
たくさんの手がかかります。

人間が生殖能力を失ったあとも長い歳月を生きられるのは、子育てのあとに「孫育て」の役目が課せられているためではないかと私は考えます。
「種の保存」という大義を前に、進化の過程で長寿遺伝子がDNAに組み込まれたのではないのかと思うのです。