制限を歓迎するだけでビジネスは楽しくなる

華僑的に「やり抜く力」が強いのはどんな人か?
『論語』の言葉がその答えです。

まず、やっていることについてよく理解している人。
よく分かっていないことをやり続けるのは困難です。

それよりも強いのは、好きでやっている人。
好きなことにはストレスを感じないので、楽に継続することができます。

そして最強なのは、楽しんでやっている人。
好きでやっている人も、楽しんでやっている人には敵わないのです。

之を知る者は、之を好む者に如かず。
之を好む者は、之を楽しむ者に如かず。
(論語)
(通訳)
物事を理解している人は、それを好む人には及ばない。
それを好む人は、それを心から楽しむ人には及ばない。

ことビジネスに関しては、好きなことを仕事にするとツラくなるというマイナス面も出てきます。
「好き」を追求したい気持ちと利益を出さなければならないという責務の間で、上手くバランスが取れずにストレスを感じている人も少なくないでしょう。

しかし、それもひっくるめて楽しめれば問題はありません。
「楽しむスキル」は最強の仕事術ともいえるのです。
ではどうすれば、楽しむスキルを身につけることができるのでしょうか?

やり抜く力が強い「楽しむ者」は、制限を楽しむ

私が知るなかで「最強の楽しむ者」はボスです。
「仕事をしているのか遊んでいるのか分からない」といつも言っているボスは、還暦を過ぎた今も私より忙しいのではと心配になるくらい働いていますが、ご本人は至って楽しそうです。

そんなボスに、楽しめる人、楽しめない人の違いを尋ねてみました。

「一番は制限。
制限があるからやる意味があると思うか、制限があるからできないと思うかの違いですね。
予算、時間、人手、ビジネスにはいろいろ制限があって当たり前です。
たとえば時間が足りない。
じゃあどうするか?
そこで智恵を絞るのが楽しい。
それがビジネスの醍醐味でしょ。
制限嫌がる人はそれ分かってないんです。
試しに、3日しかないから無理という人に、じゃあ3年あげるわと言ったらどうなりますか?
何も面白くないし、そもそもやる気なくすでしょ。」

確かに、お金にしても際限なく使えるとしたら、お金を使ってお金を増やす楽しみがなくなる上、結局ビジネスをする必要がないというところへ行き着きます。

制限を楽しむといえば、スポーツもそうですね。
ルールという制限がなければ面白くないものになってしまいます。

たとえばサッカーは手を使わないというルールがあるから面白いのです。
プレーする人にとっては、手を使わずにポールを操る技を極めることが楽しいのです。

もし「今日から手を使っていいことにする」となったら、喜ぶどころか、サッカーをやる意味がないと言ってやめてしまうでしょう。

ということで、制限を負の条件と捉えず歓迎することが、「楽しむスキル」を身につけるための第一歩となるのです。

「楽しむ者」への関門「停滞期」に努力をやめないことが大切

もうひとつ。
ボスのような「仕事が遊びか分からない」境地へと到達するまでには、何をやっても結果が出にくく、仕事の楽しさを感じにくい「停滞期」を避けて通ることはできません。

費用関数の費用曲線を思い浮かべていただきたいのですが、もっとも一般的な費用曲線は三次関数で求める逆S字型の「総費用曲線」といわれるものです。

全体的には右肩上がりですが、中盤に伸び悩む停滞期があります。

縦軸の費用を「努力」に、横軸の生産量を「結果」に置き換えてビジネスパーソンに当てはめると、20代〜30代にかけては努力をすればするだけ結果がついてきますが、だいたい30代半ばから努力に対して結果が伴いにくい停滞期へと突入します。

そして停滞期を抜けると再び上昇ラインに乗り、それほど努力しなくても結果が出るようになり「仕事が遊びか分からない」状態へと到達するのです。

停滞期に仕事が楽しくないとくさって努力をやめてしまうと、上昇ラインに乗り遅れるどころか下降してしまいます。

そこで理解しておきたいのが、伸び悩むのは当たり前だということです。

20代で順調に伸びるのは、いわゆる「ビギナーズラック」ではありません。
最初は初歩的なこと、易しいことから始めるので結果が出ている実感を得やすいというだけなのです。

それが伸び悩むようになるということは、それだけ仕事の難易度が上がり、自分のステージが上がったという証拠、歓迎すべき現象なのです。

伸び悩みを感じるツラい時期こそ、マイナスに見えることからプラスの要素を見つける「楽しむ者」の目を鍛えるチャンスです。

何事にも表と裏がある、光と陰がある。
それを念頭にやり抜いて、ぜひ「最強の楽しむ者」の醍醐味を味わっていただきたいと思います。

<華僑流ずるゆる仕事術>
何でも楽しんでストレスなくし
停滞期さえ乗り越える