キングコング西野『お金の奴隷解放宣言』

僕は芸人活動の傍ら、絵本作家としても活動しておりまして、3ヶ月前に発表した『えんとつ町のプペル』という作品が23万部突破というマグレ当たり。

本当に皆様のおかげです。
いつも本当にありがとうございます。

テレビやネット、雑誌や新聞等で、取り上げていただくようになり、連日、『えんとつ町のプペル』に関する色々な声が僕のもとに届きます。

その中で一通、とても気になった声がありました。

それは、

「2000円は高い。自分で買えない」

という意見。
小学生からでした。

『えんとつ町のプペル』は2000円です。
色を綺麗に出す為に特殊なインクを使っていて、使用するインクの数も一般的な作品より多く、そしてページ数も多いので、2000円という値段設定はギリギリまで頑張ったのですが、それでも2000円。
たしかに、小学生からしてみると大金で、自分の意思で買うことは難しいです。

実は、ここ数日、このことがずっと気にかかっていました。

《自分は『えんとつ町のプペル』を子供にも届けたいのに、たった「お金」という理由で、受けとりたくても受けとれない子がいる。》

双方が求めているのに、『お金』なんかに「ちょっと待った!」をかけられているのです。

お金を持っている人は見ることができて、
お金を持っていない人は見ることができない。

「なんで、人間が幸せになる為に発明した『お金』に、支配され、格差が生まれてんの?」と思いました。
そして、『お金』にペースを握られていることが当たり前になっていることに猛烈な気持ち悪さを覚えました。

「お金が無い人には見せませーん」ってナンダ?糞ダセー。

…いや、モノによっては、そういうモノがあってもいいのかもしれません。
しかし、はたして全てのモノが『お金』を介さないといけないのでしょうか?

SNSで誰とでも繋がれるようになり、『国民総お隣さん時代』となりました。
ならば、お金など介さずとも、昔の田舎の集落のように、物々交換や信用交換で回るモノがあってもおかしくないんじゃないか。
「ありがとう」という《恩》で回る人生があってもいいのではないか。

もしかすると、『本』には、その可能性があるのではないか?

そんなことを思い、そして、一度思ってしまったら、行動せずにはいられないタチなので、行動します。

今日をもって、『えんとつ町のプペル』を無料にします。

お金を払って買って読みたい人は、買って、
無料で読みたい人は、インターネットで最後のページまで無料で見れるようにします。

お小遣いなんて貰えない幼稚園児や小学生が、出費が重なってしまって手が出せない主婦が、何かの関係で本屋さんまで足を運ぶことができない人達が、『お金』の許可なんぞとらなくても、それぞれ自分達の意思で、『えんとつ町のプペル』を見れるようにします。

制作サイドの理由になるのですが、実はこの決断には勇気が要りました。
制作スタッフには最初の段階ですでに給料が支払われていますが、僕や出版社は絵本の売り上げ(印税)で生活しているからです。
「無料にしてしまうと、食いっぱくれてしまうのではないか?」
そんな不安もあります。

しかし僕は、『10万部売れるコト』よりも、『1億人が知っているコト』の方が遥かに価値があると考えます。

1億人を楽しませることができたら、その瞬間は1円にもならなくても、後から何とでもなると思っていますし、なんとかします。
それに、「西野君、こないだはありがとね」と夜ご飯ぐらいご馳走してもらえるんじゃねぇかな、と思っています。

だったら、もう『お金』なんて要らないです。
僕とあなたの間から『お金』を取っ払います。
『お金』を払いたい人だけが払えばいいようにします。

僕の財産は、『えんとつ町のプペル』という《作品》だと思うのですが、
個人の財産を個人が独り占めするのではなく、分配し、皆の財産にしようと思いました。
皆が豊かになった方が、巡り巡って自分も豊かになるだろう、と。
『ギブ&テイク』ではなく『ギブ&ギブ』。
自分のことだけを考えても、その方が良いだろうと結論しました。

お金の奴隷解放宣言です。

これから、無料化できるところから無料化していって、『お金』なんて、そもそも存在しなかった時代や、地域で、おこなわれていた『恩で回す』ということをやってみます。

おい!

俺にコメントをくれた小学生!
もう大丈夫だ、2000円なんて必要ないぞ!

『えんとつ町のプペル』は、ここから読んでくれ。

『えんとつ町のプペル』を全ページを無料公開。

そしてキミが、
キミのタイミングで、誰かに恩を贈ればいい。
もちろん、いきなり全部は無理だ。
「全部無償にしろ!」とも思わない。
お金を稼ぐことが悪いことだとは思わない。
僕だって、お金を貰わないと回らない仕事をたくさん抱えている。

だけど、今一度、一つ一つ確認して、
「もしかしたら、コレは恩で回せるんじゃないかな?」
「もしかしたら、コレは入り口でお金を取るのではなくて、人の善意に期待してもいいんじゃないかな?」
と考えることはできる。
そういうモノが見つかれば、そこに関しては自分ができる範囲で、自分から恩を贈ればいい。

たぶん、僕らの時代は、そっちに向かった方が面白いと思うよ(*^^*)

消費者としては無料で読めるのは有り難いのですが、作る人・売る人からは批判が殺到しています