長谷川慶太郎『トランプ新大統領誕生で世界はこうなる』SBクリエイティブより
リベラルか、保守か。
アメリカの二大政党、民主党(リベラル)と共和党(保守)はこの選択で常に意見が対立してきました。
そしてこれまでの8年間、オバマ政権下でなされてきたことへの反発がリベラルの終焉を招き、誰もがまったく予想しなかった、ドナルド・トランプ共和党候補を大統領に押し上げました。
理想ばかりで実行力に欠け、現実的には失業問題さえ解消できない民主党政権に、多くのアメリカ国民が怒りを感じていたということです。
北朝鮮の核開発も野放し、フィリピンのドゥテルテ大統領にも好き勝手を言われ、さらには国際法違反の中国に対しても強力に抗議できない「お人よし政権」に、少なからずの人々が、呆れて嫌気がさせていたのでしょう。
アメリカにかぎらず、世界はいま、デフレ構造に飲み込まれ、社会的な不満や不安を解消できない状況にさらされています。
このデフレが蔓延する世界では、自分勝手な主義・主張だけがまかり通り、人々は純粋な理想論を掲げ、ただ未来を信じて待つことができなくなってしまいました。
「希望」は消えてしまったのか。
端的に言って、そうしたアメリカの有権者の不安や、根本的な意識変化にクリントンは気づいていませんでした。
マスコミも同様です。
だからニューヨークタイムズ、ワシントンポストなど、一流と言われる新聞は、みなクリントン支持、反トランプでした。
つまりその多くが、国民意識をまったく読み違えていたということです。
今回の選挙が明らかにしたことは、伝統的な民主主義のリベラルは、すでに死んでしまったということです。
民主党は未来予測ができずに失墜しました。
あまつさえ、自分の政党の失敗すら読めなかったのですから、見事な敗北です。
民主党はデフレ世界への社会構造の変化が読めなかった。
どういうことが起こっているかをまったく読めなかったのです。
トランプ大統領はポピュリズムを満足させながら、これからのデフレ世界を生きていく知恵を絞り出さなければなりません。
その知恵にこそ、希望があるのです。
生き延びていくにはそれを見出すしかない。
それは決して楽な道のりではありません。
血のにじむ努力がわが国にも企業にも、そして個人にも求められるでしょう。
http://ameblo.jp/hiroo117/より
本書の対談者の田原総一朗氏はこう語る。
「長谷川さんはソ連の崩壊もいち早く予測し、また早くから『トランプを侮ってはいけない。アメリカは彼のような男を待っている。なぜらならクリントンの民主党では、いまのアメリカをリードできない、変えられないからだ』と言って、この日を予測していました。
これは長谷川さん自身がトランプ推進者だったからではなく、ポピュリズムの恐ろしさをいちばん感じていたからです。
アメリカの閉塞感はどこから来るのか。
それは世界中に蔓延する底知れないデフレの中での不平等感にあります。
長谷川さんは、日本はいち早く「失われた20年」の洗礼を受け、デフレに強い体質へと構造変革をしてきたと言います。
そして日本はこれまで、世界中のどこよりも平等意識が強く、貧富の差の少ない社会をよしとしてきました」
長谷川氏は、世界の流れはリベラルからポピュリズムに変わるという。
また、中国経済は破綻に向かってまっしぐらに進み、ロシア経済はもう一度潰れるという。
世界的なデフレの流れの中、我々はどう進めばいいのか。
それは、量から質への転換をはかることだという。
世界の大きな潮流を学び、それを自分の行動に落とし込みたい。