僕のところには企業から「モチベーションアップ・セミナー」の講師の依頼があります。
よほどいつも前向きで、やる気に満ちた人間に見えているのでしょう。
ただ、いつも同じお返事をしています。
「『モチベーションアップ!』なんてセミナーをひらいた時点で、むしろモチベーションダウンになっちゃいますよ」
「モチベーションが続かない」「最後までやりきれない」
そんな悩みは誰にでもあるものです。
でも、「勉強しなきゃ」「スキルアップしなきゃ」 と気合を入れても、時間とともにモチベーションはどんどん下がってしまいますよね。
なぜなら、「しなきゃいけない」は義務・受身の感情だからです。
どんなにモチベーションを上げて、スーパー・ポジティブになっても、「義務」のままだと疲れてしまいます。
だからモチベーションが下がったら、上げる。
この繰り返し。
栄養ドリンクを毎日飲むようなものです。
逆に、子どもはどんなに遊んでも、ずっと元気です。
なぜなら義務感がないから。
「能動」は疲れないのです。
どんなに漫画が好きでも、「ドラゴンボール」が予備校の試験に出たら、辛くありませんか?
「フリーザの親の名前を答えよ」といわれても、暗記したくないですよね。
逆に、
「勉強するとモテすぎちゃうから、絶対に、勉強だけはしちゃいけないよ」
といわれたら、どうでしょう?
したくてしょうがなくなりますよね。
脳は、1日の中で5万回、思考をしているそうです。
実は、ほとんどが「義務感」。
歯を磨かなきゃ、服を着なきゃ、会社に行かなきゃ、メールを返さなきゃ。
1日が終わった後の、ぐったり感の正体は、自分が積み重ねた義務感だったのです。
毎日繰り返される「しなきゃ」の嵐。
それを、思わずやりたくなる「能動言葉」に変えれば、そもそもモチベーションなんか気にする必要はなくなります。
「しなきゃ思考」のネガポジ変換を紹介しましょう。
僕の書道教室では、生徒さんを相手に、「苦手を得意に変える魔法のワークショップ」を開いています。
これが、効果てきめん、かつカンタンだと評判です。
大嫌いだったニンジンを、食べられるようになった。
まったくできなかった部屋の片付けが苦にならなくなった。
授業中、眠かったのに、前のめりで聴くようになった。
いかがでしょう?
生徒さんから、驚きの声が届いています(笑)。
「どうすればいいんですか」ですって?
「書く」だけなんです。
高校生の生徒、えりかちやんの例で解説しましょう。
まず自分が苦手なものと理由を、紙に書きます。
えりかちやんの苦手は「生物」でした。
えりかちやんは、生物の教科書に載っているカエルの解剖を「気持ち悪い」と感じてしまい、教科書を開くのがイヤになりました。
その結果、生物と聞いただけで、気が滅入ってしまい、成績も落ちていったのです。
なので、えりかちやんには、こう書いてもらいました。
「生物の教科書が、気持ち悪くて、大嫌い」
その後に、嫌いなはずの生物を、ワクワクするもののように書きます。
「私は、ふと気づく。夢中で、生物の教科書を開いていた」
そして最初に書いた「大嫌い」の書を破り捨てて、次に書いた「ワクワク」の書を部屋に貼る。
たまにそれを眺める。
それだけです。
えりかちやんの場合、1週間ほどで、効果が現れました。
あれだけ嫌いだった生物の教科書ですが、開くのが楽しみになってきたのです。
おもしろく感じてしまえばこちらのもの。
授業は自然と頭に入るようになり、今ではクラスでも1,2を争う成績になりました。
魔法と言いましたが、魔法ではありません。
もともと「好き」と「嫌い」はあいまいな感情です。
どんなに「嫌いだ!」と思い込んでいても、強い関心を寄せているという点では、好きも嫌いも同じ仲間。
表裏一体です。
だから、言葉の力で、嫌いを好きに、上書きしてしまえばいいというわけです。
コツは「新しい習慣」として上書きすることです。
「私は生物が嫌いじゃない!」と書く人がいますが逆効果。
何かをやめるという意思決定は、とてもむずかしいもの。
新しく始めて、上書きするほうがずっとラクです。
やらなきゃいけないものがあるときは、ワクワクするものに上書きしてしまいましょう。
間違っても、モチベーションを上げようとしてはいけませんよ。