13年ぶりの全国大会『最後の一滴』

DSC_0015たった一冊の本を届けるためだけに出版社を創業し、全国47都道府県をリヤカーを引いて行脚する男、田中克成。
借金7000万。銀行口座14円という、どん底の人生を経験した彼が、500人の成功者の人生を0歳から一年一年、インタビューして発見した共通点を凝縮

「人事を尽くして天命を待つ」という言葉がある

僕が、座右の銘の筆頭に掲げる大好きな言葉だ

長らく、この言葉の意味を僕は履き違えていたのだが、その言葉の真意を理解できたとき、僕はこの言葉を座右の銘の一群に加え、筆頭とすることになった

この言葉の真意を知ったのは、知人のコーチから聞いた話だった

ある町のサッカー部の高校生が、そのコーチにメンタルトレーニングを申し込んできた

彼らは自分たちの小遣いを出し合い、「これだけしかないのですが…」と申し訳なさそうにやってきた

話を聞くと、今年こそ県大会を勝ち抜いて、全国大会出場を勝ち取りたいのだと言う

最後に自分たちの高校が全国大会に出場したのは、13年も前

昨年までの12年間は、全国でも屈指の強豪校が独占していたのだそうだ

13年ぶりの快挙を自分たちの代で成し遂げたい

そのために、彼らはメンタルトレーニングを申し込んできたのだ

本気で取り組むことを約束させ、彼はその依頼を引き受けた

彼が選手たちにおこなった最初のトレーニングは「雑巾絞り」の実習だった

選手たちを5人1組の班に分け、バケツと雑巾を用意した

「今から、雑巾絞りをやってもらいます

各班のリーダーは水に浸した雑巾を全力で絞ってください

そして、5分以内に、最後の一滴まで絞り出してください

他の4人は、リーダーを全力で応援すること

全員が『今のが間違いなく最後の一滴だ』と確信を持てたら終了です

手を挙げて私に知らせてください」

各班のリーダーたちは持てる力を出し切って雑巾を絞る

それをまわりで応援する選手たちも、声がかすれんばかりに全力でリーダーを応援する

「もうこれ以上絞れない」

最後の力を振り絞ったとき、ポタ、と一滴の雫が落ちる

その一滴を見た瞬間、全員が歓声を上げる

「出た!コーチ、出ました!最後の一滴です!間違いなく最後の一滴です!」

コーチは、その班のもとに行き
「ちょっと貸してみて」とリーダーから雑巾を受けとるや
「本当に最後の一滴だった?まだ湿ってるけど?」と選手たちに確認する

そう言われると、選手たちの自信も不安に変わる

「すみません、まだ出るかもしれません…」

「じゃあ、継続」

また彼らの全力の雑巾絞りが始まる

もう、どんなに雑巾を絞りあげても一滴も出てこない

結局、誰も最後の一滴を見ることなく、5分間の制限時間を終えてしまった

「最後の一滴を出せた班はありますか?」

選手たちは全員うつむいて声をあげる者は誰一人いない

「では、皆さんに答えを教えます」

そう言って、一呼吸置いたのち、コーチは言った

「さっき出た一滴が、最後の一滴かどうかは、最後まで誰にもわかりません

それでも、制限時間を迎えるまで、最後の一滴を出そうとすべての力を出し尽くしてください

同じように、君たちが全国に行けるかどうかは、最後まで誰にもわかりません

それでも、今日の練習から高校生活最後のホイッスルを聞くまでのあいだ、最後の一滴を出そうと全力を尽くしてください

その上で、出た結果をいさぎよく受け入れてください」

これが、「人事を尽くして天命を待つ」の真意だ

結果は、最後まで誰にもわからない

目標を達成したとしても、それは次の挑戦への通過点であり、失敗したとしても、その結果も次の挑戦への通過点に過ぎない

重要なのは、最後の一滴を出すことに全力を尽くすということだ

通過点に過ぎない結果が重要なのではない

今こそ、持てる限りの勇気を振り絞り、最後の一滴を出し切ろうと全力を尽くすことだ

今握っている最後の一手を打ち切るということは、何よりも怖いことだろう

しかし、そのまま握り続けても、過渡期を長引かせることになるだけだ

この話に登場する高校生たちが最後の一滴まで出し切ろうと全力を尽くしたように、その最後の一手を真っ直ぐな心で打ち終えよう

覚悟を決めて、自分が思い描いた理想の未来を強く信じることだ

絶対にやれる。絶対にやれるのだから

さて、サッカー部の選手たちの「その後」も添えておきたいと思う

その年の冬、13年ぶりに全国大会の国立競技場のピッチに立った選手たちの表情から、「やり切る」ということの大切さを改めてコーチ自身が教えられた、とのことであった