他人の感情を自分のもののように味わうことができる格好の教材が映画や小説です
登場人物に感情移入している間、私たちは自分を忘れます
ジャッジすることなく登場人物の気持ちを受け止め、ときには共感の涙を流したりします
映画や小説や自分とまったく違う環境、立場にいる人にも簡単に感情移入することができるのがすごいところです
相手と同じ経験がなくても、似た感情を引き出して味わうことで感情を共有できます。
当然ながら、自分自身がさまざまな経験をしているほど、感情の引き出しは増えます
過去につらい経験を多くしている人ほど、共感力が高いのはそのためです
とはいえ、1人の人間ができる経験にも限界があります
友人に裏切られた経験、会社を潰した経験など、しようと思ってするものではない経験もたくさんあります
それを疑似的に体験させてくれるのが映画や小説です
何となくストーリーを楽しむのではなく、登場人物になりきって、感情を味わうようにしてみましょう
身近な人と、同じ映画を観たり小説を読んだりしたときは、その感想を話し合うと面白いことがわかります
「泣ける映画だった」
「やっぱりあの俳優はかっこいい」
そんな程度の感想で終わらせるのではなく、感動した箇所、心を動かされた理由を話し合ってみます
すると、自分と相手で感動した部分が違うことに気づかされます
泣いたシーンも違うし、印象に残ったシーンも違ったりするのです
宮崎駿監督の映画「ハウルの動く城」で、ある人はヒロインのソフィーが呪いをかけられておばあさんになり、それに対して驚かなかったという最初のシーンで感動し
「信じたくないような事実を潔く受け入れたソフィーは、なんてカッコいいんだろう」と泣きました
またある人は、弱虫な魔法使いのハウルが戦場に向かう前にソフィーに言った
「ようやく守らなければならないものができたんだ、君だ」という言葉に、守りたいものがあることの強さを思ってジーンとしました
人によって反応するところが違うのは当たり前なのですが、こうして感想を言い合ってみると、あらためて気づかされます
そして、夫婦、恋人、友人などよく知っている間柄でも
「こういうところで泣くのか」
「こんなふうに感動するのか」
と新たな発見をすることができるのも面白いところです