ヨーロッパでは、古きよきものを大切に残していくという文化が根づいています
デンマークでも、100年以上前からある工場や倉庫だった建物を、カスタマイズして、家具のショールームにしているような会社が非常に多いです
これが、日本で家具のショールームをつくろうと思うと、どこか適当なビルの一階のテナントを探して、家具を搬入して、看板をつけて…という流れが通常だと思われています
それがデンマークでは、あえて古い建物を探してきて、それに大規模な改修工事をおこない、リノベーション&カスタマイズして、再利用するケースが多いのです
「古い建物こそ価値がある」
「古さこそが美」という観点があるからです
歴史あるものを美しく使い続けていることこそが美徳であり、ステータスであるという考え方が常識なのです
たとえば壁のちょっとした汚れも
「デザイン」としてとらえます
古くなったものや汚れなどを
日本人はすぐきれいにしたがりますが
デンマークではそれを「味」としてとらえて
残そうとします
古きものを「価値」として
とらえるということです
少しきついいい方になりますが、京都などに代表されるような歴史的な建造物を除いて、日本は何でも中途半端にきれいにしようとしてしまうものだから、なんとなく「オシャレ」「美しい」というイメージが持たれにくいのだと思います
車にたとえてもわかりやすいです
ヨーロッパ車であるメルセデス・ベンツやポルシェのデザインは、何年経っても大きく変わることはありません
だから誰がデザインを見ても、ひと目で
「ベンツだ」「ポルシェだ」とわかるのです
それに対して日本車は、モデルチェンジしていくと、まったく違うかたちに変わることが多いと思いませんか
同じ車種なのに、見た目にまったく共通点がなくなってしまうのです
すべてをリセットして
どんどん新しくしてしまうのが日本
デザインのよきものを継続して、それを少しずつバージョンアップしていくのがヨーロッパの考え方、ということです
日本はその「継承」という意識が、じつは世界的に見ても少ない国なのだと思います
汚れてしまったら、すぐきれいにしたがるのが日本人で、汚れでさえもデザインとしてとらえるのがデンマーク人
たとえば、大切にしているものに傷がついたとします
多くの日本人は「この傷をどう直そうか」と考えます
それに対して、デンマークの人々は
「この傷をどう残そうか」と考えるのです
だから建物に対しても一緒で、どうやってこの古いデザインを残して、住みやすくしようかなということに、趣向を凝らすのです
この考え方は、近年日本でも、リノベーションとして、動きが高まってきており、若いオシャレな人たちによって、古いものを残そうという考え方が活発化してきました
町屋を改造してシェアハウスにしたり、古い旅館を改造してデザインホテルにしたり…
そういったことを考える若者が増えてきたこと自体は、非常にいい流れだと思いますが、まだまだ常識とまではいえません
古いものこそ美しい
古きよきものを継承していく
そういった考え方が、デンマークの「豊かさ」「幸福度」といったキーワードに影響しているのではないでしょうか