明治末期から昭和初期の密造どぶろくとこれを取り締まる税務署の攻防の資料を読んでいるが、これはすごいなぁ。摘発隊が鎌や鉈で武装した一団に襲撃される事件や税務署員が殺害されて遺体が遺棄された事件もあった。地域全体に通報網を作って摘発を逃れたり、逆に税務署が内部にスパイを獲得したり。
— 白土晴一 (@manetoke) August 6, 2020
税務署の調査が来ると、村役場が「皆さん、税務署の調査に協力しましょう」と村内放送で知らせたり、村の電気会社が送電線をわざと2、3度切って電灯の点滅で知らせたり。税務署が夜に摘発しようと懐中電灯をつけて夜道を歩くと、そこに猟銃をぶっ放すので、税務署員は暗闇を灯りなしで進んだとか。
— 白土晴一 (@manetoke) August 6, 2020
村の駐在や役場などもどぶろく密造に協力的で、税務署が来ると小学校にどぶろくを隠したり、郵便局長が郵便袋に隠して「通信の秘密」を盾に調査を拒んだり。何せ学校の家庭科の先生が密造して、教師が振る舞っている場合もある。どぶろく版ブレイキング・バッドだ!
— 白土晴一 (@manetoke) August 6, 2020
税務署も負けずに麹屋を徹底マークしたり、村の酒屋に清酒をほとんど買わない家を聞いたりするらしい。税務署に酒屋が来たという話が伝わると、急に清酒の売り上げが良くなるとか。そして、村で揉め事が起こると、揉めた相手の家に税務署の調査を入れたくてタレコミが増える。
— 白土晴一 (@manetoke) August 6, 2020
税務署員の自転車のタイヤはすぐ穴を開けられるので、自前でパンクができるようにし、自転車屋並みに修理が早くなったという証言もある。押収されそうなどぶろくを実力行使で取り返そうとするものが多いので、ど摘発を担当する税務署員は選りすぐりで、格闘の邪魔になるので上着のポケットは取り外す。
— 白土晴一 (@manetoke) August 6, 2020
なんだろう、「密造酒の歴史」で読んだ北米のムーンシャインの話なんかと同じようなことがことがあったと感慨深い。自家醸造と酒税って、近代の税制史では重要なテーマなんだよねぇ。https://t.co/s66KR7E5bg
— 白土晴一 (@manetoke) August 6, 2020
ちなみにどぶろく密造の村の摘発している記録映像がYouTubeにあります。https://t.co/iFHfPa2NjI
— 白土晴一 (@manetoke) August 7, 2020
九州の密造芋焼酎の話なども、凄そうです。
— くろ☆ねこ (@schwkatz) August 7, 2020
原料の芋のどぶろくを山の中の秘密蒸留器で蒸留するので、煙が上がるので地元の人はわかるそうです。
— くろ☆ねこ (@schwkatz) August 7, 2020
酒と税金で攻防があるのは、近代化の証です!
— 白土晴一 (@manetoke) August 7, 2020
宮沢賢治の作品に税務当局と村の密造団の死闘を描いた童話がありましたが、当事の事実に取材してるんでしょうね。
— 司史生@やる気がでない (@tsukasafumio) August 7, 2020
いま手元にありませんが、上にご紹介されてるような攻防が作中でほぼ網羅されてたように記憶してます。
— 司史生@やる気がでない (@tsukasafumio) August 7, 2020
税務署の摘発はなくなりましたけど、21世紀の秋田県県北部ではドブロクは今でも秋の隠れた風物詩ですよ。
集落に顔の利く人と仲良くなれると、ドブロクを融通してもらえる。ただ作れる人が高齢化しているので、いずれなくなる文化だと思う— 塩さば (@Mt7yamame) August 7, 2020
昭和初期生まれの人から聞いたことがあります。
税務署が来ると、エジコの中にどぶろくだかどぶろくの元を入れ、その上に幼い子を座らせ、動かないように、何を言われても返事をしないように、言い聞かされたそうです。— jumyばあ (@jumygrandmam) August 7, 2020
90年代ですか、それは長く伝統を守りましたねぇ。褒めてはイカンのでしょうが、感心します。
— 白土晴一 (@manetoke) August 7, 2020
新潟はお米が美味しいので、酒をつくりたがる農家も多いそうで…
密造酒は、基本内々でやる(販売目的ではなく村人の嗜好品として)つくるそうなんですが、区長をやっていた祖父によると、個人でやる分には警察署長に怒られるだけで済みますが、村ぐるみになると、洒落にならない国家権力が動くとか…
— Java-lan(ポータブル) (@lan_java) August 7, 2020
身代わり逮捕は多そうですようねぇ。こういう地域コミュニティーぐるみの話だと。
— 白土晴一 (@manetoke) August 7, 2020
古い出版もありますし、税務書の資料もありますねぇ。
— 白土晴一 (@manetoke) August 7, 2020
酒税が日露戦争以後では税収第1位で(所得税法人税がこれを超えるのは昭和)、国家財源では大きな位置を占めていたからでしょう。密造酒が増えると国家財政に影響が出たので、国も強く出たのでしょう。作る側からしたら、気軽に作っていたものを急にダメと言われるので反発するのも無理はないかと。
— 白土晴一 (@manetoke) August 7, 2020
たしか1900年前後から地租を抜いて酒税が税収第一位になっている筈です。これは明治二十九年(1896年)の酒造税法制定とその後の自家用料酒禁止が大きく、あとは市場に流通する清酒の税金を上げれば、明治政府の税収が増える仕組みが機能したからかと思います。
— 白土晴一 (@manetoke) August 7, 2020
宮沢賢治に『税務署長の冒険』という怪作がありますよね。濁密(密造どぶろく)をやる農民と税務署の攻防をネタにしてて、私は子供時代にこれ読んだ時は随分と奇想天外な話に感じましたけど、実は当時の農村のリアルな実情を描いた作品なんですよね
税務署長の冒険-青空文庫https://t.co/j3sf9h2L8b
— けんゆう2G (@kane2g765) August 7, 2020