昔付き合ってる時、夫さんの家にいったら洗濯物が室内に干してあって「すぐ片付けるね」と手際よく回収してるその手元からパンツが、こう、ひらっと、私のくちのあいたトートバックに、すぽんと入ったんですよね。そこですぐ「落ちたよ」と言えば良かったんですけど、何せパンツです。
— こ_は_く (@ahiru589) June 19, 2020
畳んだ方がいいのか、でもどう畳めばいいのか皆目検討もつきませんし、あまり手で触りまくるのもよくないか、じゃあそのままつまんで渡そうかとも思ったんですけど、つまむのって汚い感じがしますよね?なら両手で受けるようにのっけて渡せばいいですかね?恭しすぎますかね?
— こ_は_く (@ahiru589) June 19, 2020
そもそも触らずに「あ、お洗濯もの落ちたよ!」と鞄を指差せばいいのか、でも白々しくない?お前座ってるんだから立って洗濯物処理してる人に渡すべきじゃない?ってならない?どうすれば、どうすれば、と焦るうちに、洗濯物を回収し終えた夫さんは移動を開始してしまいました。完全に手遅れです。
— こ_は_く (@ahiru589) June 19, 2020
パンツごときで何照れてんだってなりますけど、当時はまだおパンツを拝見させていただける間柄ではありませんでしたし、手も繋いですらないわけですよ。それなのに鞄には付き合いたての恋人のパンツが入ってるんですよ。どうみても変態です。パンツを持ち帰ろうとする変態です。痴女です。
— こ_は_く (@ahiru589) June 19, 2020
アラサーにもなって、指一本触れることなく面と向かってお付き合いしてくださいと言ってくれる素晴らしい男性です。やることやったし私彼女だよね?みたいな荒んだ世界ではないんですよ。とてもいい人なんですよ。で、今その人のパンツが鞄に入ってるんですよ。
— こ_は_く (@ahiru589) June 19, 2020
しかも完全にタイミングを逃して、彼は少し離れたところで丁寧に洗濯物を畳んでます。ここまでお互いに無言です。大抵会話という会話がないんでいつもの事なんですけど、より声をかけるハードルが上がります。虚しくテレビの音だけが響いてますが内容なんて全く入ってきません。鞄にはパンツ入るけど。
— こ_は_く (@ahiru589) June 19, 2020
もう持って帰るか?でも私はパンツに発情しない。勿論そういう問題ではないんだけど、そう勘違いされるのは嫌だ。焦りに焦った私は素直に話すしかない、顔に出してはいけない、努めて冷静に振る舞おうと深呼吸をして、声を出しました。その声はものすごく低く、震えていたかもしれません。
「あの」— こ_は_く (@ahiru589) June 19, 2020
冷汗が吹き出し、心臓って鼓膜についてたっけ?というくらい大きくばっくばっくと鳴り響きます。もう自分の声すらまともに聞き取れませんから、とんでもなく大きな声を出しているかもしれなかった。
「さっきパンツが鞄に落ちたけど、これ、お土産として頂戴してもよろしいのかしら?」
終わった
— こ_は_く (@ahiru589) June 19, 2020
私が恥ずかしいんだ、彼はもっと恥ずかしいに違いない。もういっそ笑い話にしてしまえばいい、そう思ってジョーク混じりに茶目っ気ある言葉を選んだつもりだがくそほどに滑っていた。これではお土産にパンツ持って帰ろうとしてるご令嬢だ。そもそも痴女だ。恋人がこんな事いったらドン引きする。
— こ_は_く (@ahiru589) June 19, 2020
固まってしまった私の前を彼の手がすっと伸びてパンツをとらえた。
返事は何もなかった。
無言だった。
無言でパンツを回収された。無言かよって思っても、どんな言葉をかけてもらえばよかったか、言った私にも解らない。彼からしてもこれが最善の選択だろうと解った。
その後私たちは結婚した。
— こ_は_く (@ahiru589) June 19, 2020
夫となった彼のパンツを畳ながら
あのときどうすればよかったのかと、今でも考える。過去には戻れない。
ただ今この手に彼のパンツがある。
これを幸せと言わずしてなんというのだろう。おしまい
— こ_は_く (@ahiru589) June 19, 2020
それも考えはしました(告白)
— こ_は_く (@ahiru589) June 19, 2020
結婚してなかったらトラウマになってた
— こ_は_く (@ahiru589) June 19, 2020
これだけ情感たっぷりに描かれた男物のパンツの話、かつて見たことがないです
— イモ掘り日和 (@Fried_KitaAkari) June 19, 2020
パンツもお話もうまいことオチたもんです??
— タツキチ (@tatsukiti0) June 19, 2020
話そのものよりも、沈黙の時間が許容できる間柄というのはいいなと感じ入りました。
私の鞄にパンツは入ってないですけど。— TAKAHIRO (@c_o_t) June 19, 2020
私の文章はとても乱れていてお世辞にも見られたものではないのですが、感想をくださってありがとうございます。お返事がおっつかないので、こちらにてまとめて失礼しました。
— こ_は_く (@ahiru589) June 19, 2020