小救急医の心配事


僕は反省しなければならない。当初僕はこの感染を甘く見ていた。医療者の端くれとして非常に申し訳なく思っており、恥を忍んでこう言いたい。

日本の皆さんは、家にとどまるべきだ。リーダーは都市封鎖を断行する勇気を持ってもらいたい。市民にはそれを理解し支持する賢さを持ってもらいたい。

アメリカに来て5、6年。1月、日本で始まった感染拡大を外から気を揉みながら見守ってきた。日本一丸となって素晴らしい取り組みだったと思う。

それから3ヶ月。現在はこちらが感染の中心になった。

脳卒中の人、心臓発作の人、目を覆いたくなるような大怪我した人がたて続けに運ばれて来ても、その横で平気でコーヒーを飲んだり、冗談いったり、あくびしたりする猛者が集うアメリカの救急室でも、さすがに状況が変わった。

昨夜、救急室で重篤な肺炎患者が次々と運ばれては人工呼吸器につながれていく光景を目の当たりにし、私も私の同僚もかつてない恐怖を感じた。
まるで津波だ。僕らは無抵抗で流されている。

私たちは病気に対して恐怖を感じたのではなく、このまま医療資源が枯渇して救える人を救えなくなってしまうことに恐怖を感じたのだ。医療者にとって、それが一番辛い。

マスクは足りず、マスクを手作りする人もいる。防護服も足りず、ゴミ袋をかぶって診察する人もいるようだ。私はもうすっかり麻痺してしまったが、一般の人からすればこちらの救急の日常は地獄絵図そのものだろう。その地獄の住人たちが心底恐怖を感じていることをわかってほしい。

この危機はすぐさま日本にたどり着くだろう。

パニックになる必要はない。マスクなどの医療資源の買い占めは医療者を苦しめ、それは患者の不利益へとつながるので絶対に避けるべきだ。

外に出ないでほしい。他人との接触を避けてほしい。手を洗ってほしい。一時的な不便を理解する賢さを持ってほしい。現在それ以外この地獄を抜け出す道はなさそうだ。