コロナウイルスと簡易PCR検査と医療崩壊の話

なぜ無闇にPCR検査をしないほうがいいのか、についてだけど、これだけ「医者」や「研究者」「専門家」がやめてくれと言っているのにはちゃんと理由があって、それはやっぱり最近よく聞いているだろう「医療崩壊を招くから」の一言に尽きるのだとおもう

この医療崩壊という言葉の意味をイマイチ理解できなくて、検査をしてくれ見殺しにする気かと繰り返すひとたちが多いようにおもうので、その只中で働いている身として、拙いけれどすこし話をしたい

医療関係者が言っている医療崩壊というのは「必要なひとに必要な分の医療すら行えなくなってしまうこと」という意味であって、この、必要なひと、というのはCOVID-19の感染者だけではなく、白血病とか癌とか他のたくさんの病気で苦しんでいるすべての患者さんのことを言っている

COVID-19が流行るよりも前から色んな病気で苦しんでいるひとは、赤ちゃんからお年寄りまで本当にたくさん病院にいるし、通っているウイルスのPCR検査を外注せず自分の病院でできるほどの病院には、特に重症だったり他の病院では治療できないような病気、または超急性期で刻一刻を争うような患者さんが多いのではないかな少なくともうちの病院はそう

COVID-19なんてなくても毎日本当に本当に忙しい

検査をしないで見殺しにするつもりなんて全くないけど、病院はCOVID-19のためだけの施設ではないことを思い出してほしい

COVID-19の感染拡大を抑えることもとっても大切で、今いる患者さんを守ることもとっても大切だから、「医者が」このひとはCOVID-19の検査をするべきだ、と判断したひとだけPCR検査をオーダーすることにしている

COVID-19の検査をしないわけじゃないするべきひとの検査をするそれも、「プロがする/しないを判断」して、さらに「プロが検査する」から意味がある限られた施設と資源を、「必要なひとに必要な分」有効につかえる

これが、一般のひとたちが自己判断で検査できるようになったらどうなるだろう

これはキツい言い方になってしまうかもしれないけれど、まず簡易キット?なんかは論外で、素人が採ってきた検体には全く信用性がない

検査というのは検体を「正しく」採取するところからはじまっているから、その為の講習会を検査技師はみんな受けているし、正しく採取するということがいかに大切かみんなよく分かっている

それを講習も受けていない素人が鼻に棒を突っ込んで「採った」と言ったところで、こちらとしては信用できないし、それで病院に来て陽性だったと言われても、信じられるはずもない(でも陽性だと言われてしまったら受け入れなければいけない)ので、結局もう一度頭から検査をし直すことになる

どんな検査にも、偽陽性とか偽陰性とか、検査技師を悩ませる要素は多いしね

これはどの病院でもそうなるとおもう

本当に手間と時間がかかる

PCRというのはそもそもとても繊細な手作業で、たとえ国家資格を持った検査技師でも、今日教えてもらってはい分かりましたと今日できるようなものではない

それに何度も言うけれど、このひとにはどのお薬で治療するのがいいか(白血病など、遺伝子異常の種類によってはよく効くお薬があることがある)、骨髄移植が成功しているか、とか、PCR検査ができる検査技師には毎日他にもたくさんやることがある

検査キット、なんてものが日本にばらまかれて、だれでも自己判断で検査して、陽性がでたからなんとかしてくれ、と病院に押し寄せてきたら、それをぜんぶ再検査するの?

骨髄移植のひとのための検査もしなくちゃいけないのに?

たとえ無症状でも軽症状でも「陽性」とでたら怖くなるとおもう病院に来るひとはきっとぜったいに今よりもさらに増える

「自分は軽症なら自宅待機できる」と今は言えるかもしれないけれど、いざ「陽性」と出たとき本当にお家の中でじっとしていられますか?

世界をこんなに混乱させているウイルスが自分の体にいる(かもしれない)と知ったとき、熱がなくても咳は少ししか出なくても、自宅待機できますか?

その怖いという気持ちを否定しませんわたしだってきっと怖くなる

そうして、病院のベッドが足りなくなって、検査も追いつかなくなって、「医師がこのひとは重症だ、検査をしてくださいと言った感染疑いの患者さん」の検査が後回しになって、救急車で運ばれてきたCOVID-19なんて関係ない小さな子どもを受け入れてあげられなくて、ひとが死ぬのです

これを「医療崩壊」というのだとおもいます

検査をしないわけではなくて、必要なひとが迅速に確実な検査を受けられるようにする
それが目的
これを分かってくれるひとが増えたらと、本当に心からおもう

もっと上手く書けたらよかったけれどここまで読んでくれたひと、ありがとうございます