30代のうちに「目上を大切にする心配り」を身につける

成功者にはランチをおごれ

最近、私がお世話になっている先輩からこんな話を聞いた。

とてもやる気のある起業家から「どうしても話を聞きたい」と言われ、時間をとって彼と会ったときのこと。
時間と店を彼に任せると、高級店のランチの時間を指定してきたらしい。

彼は、とても素晴らしい学びを得ることができ、忙しいなか自分のためにわざわざ時間をつくってくれた先輩に感謝の気持ちを伝えたくて、さりげなく会計を済ませておいたというのだ。

成功者と呼ばれる人や、上の立場に立つ人は、普段から人におごることが当たり前になっている。

おごられる側も口にはしないが、そうしてもらうのが当たり前だと思っている。

そう言うと、「そんな立派な人が相手なら、なおさら豪華な夕食を準備するほうがいいのでは?」と思うかもしれない。

しかし、成功者や目上の人にご馳走するのは、ディナーでなくランチがいい。

そこにも、理由がある。

ディナーはランチよりもあきらかに高額になるだろう。
お酒が入るかもしれないし、そのまま2軒目、3軒目・・・という流れになることも考えられる。

となると、おごられた側からしたら、高額になればなるほど、相手に対して「申し訳ない」と思うだろうし、起業したばかりの若者に、そんな高額を出させるわけにはいかなくなる。
ゆえに、結局は自分が支払いをしなければいけない状況になってしまう。

成功者であるほど、そういった気遣いには敏感だ。

しかし、ランチなら高額になる心配はない。
レストランやカフェなら少々豪勢な場所だとしても、いって2000〜3000円前後が相場だ。
ホテルのランチでも数千円といったところだろう。
気遣いができる人に気を遣わせないためには、そのくらいの金額がちょうどいい。
だから彼は、あえてそのランチの時間を指定したのだ。
「人におごられたことなんて数年ぶりだよ。いつか彼を茂久にも紹介したいなあ。いい男なんだよ」

先輩はうれしそうに、私にそう言った。

会ったことはないが、その彼は確実に伸びると思った。

事実、その先輩はすっかり彼の虜になってしまっている。

こうしてまわりの人たちを味方にしながら、応援の風を背に受けて、その彼はこれからも駆け上がっていくはずだ。

彼の行動は、相手がどんな成功者であろうと、その人の立場になって気遣いすることの大切さを教えてくれる。
そして、そう考えられる人は、人のことも、そして自分の人生もうまく動かすことができる。

このように普通の人との逆をやるダイヤモンドの原石のような若者は、必ず希少価値が上がっていく。
理屈で考えても、そんな人をまわりが放っておくはずがない。

成功者も上司もリーダーも、みんな感情を持った一人の人間だと知る

「成功者」や「リーダー」と呼ばれる人が普段どんなことを考えているか、想像してみたことはあるだろうか?

よく人生を山登りにたとえる人がいるが、たしかに人は立場が上になればなるほど、素晴らしい景色を見ることができるだろう。

いまなら、社会的に成功した人が住むタワーマンションや、高層階のオフィスなどにたとえてもわかりやすいかもしれない。

「その美しい景色を見れば、ここまで登ってきた苦労など忘れてしまう。だからこそ、頂上へ向かって努力し、逼進すべきだ」

そんな文言をよく見かけるが、実際に山登りをした人に聞いてみると、最初はうれしくても、やがてその状況に人は慣れていき、最初の感動は薄れていくらしい。

同時に上に行けば行くほど酸素は薄くなり、苦しい場面も多々出てくるという。

その苦しさをまわりの人に気づいてもらえないと、孤独を感じている人も少なくはない。

よく「社長は孤独だ」という言葉を耳にすることがあるが、それはまさに頂上ならではの苦しさから生じる悩みなのだろう。

しかし、部下からすると、「社長」というだけで、なぜか自分とは違う人種と感じており、社長には悩みなどあるわけがないと無意識に思っている人も多い。

そんなことはない。

社長でも上司でも、誰もが普通の感情を持った人間だ。

事実あなた自身も、「30代って、もっと大人と思ってたけど、意外と昔と変わらないなあ」と思ったことはあると思う。

それと同じで、立場が上がったからといって心が激変するなどということはない。
成功者やリーダーとはいえど、同じ人間にそのバッジがついただけだ。

本質は普通の人と変わらない。
相手がどんなに立派な成功者であろうと、同じ人間であることに変わりはないのだ。

30代は、部下や後輩が増えるぶん、中間管理職として、社長や上司の気持ちも理解しなければならない時期だ。

自分よりも目上の人の気持ちもわかり、部下の気持ちも理解しなければいけない年代だからこそ、気遣いのアンテナを敏感に作動させなければならない状況が数々出てくるのだ。

だからこそ、相手の立場を理解し、大切にする習慣をつねに意識してほしい。