マダムをエスコートした時間は素敵だったけど点字ブロックが伸びてる方がいい

出来たてホヤホヤの渋谷スクランブルスクエアに物申す。

なんでこの点字ブロックを、奥に見えるエスカレーターのど真ん前まで伸ばしてないんでしょうか?

教えて、偉いひと。

このインフォメーションの画面の前で、白杖持ったマダムがオロオロしてた。

時間あるんでご案内しますよーって声をかけたら目的地がおんなじだったので、2人で銀座線を目指した。

自分の肘を差出す前に、シブヤメグミと申しますって自己紹介をしたら、マダムも微笑んで自己紹介してくれた。

持病の合併症で目が見えなくなったばかりで、まだ白杖に慣れていないこと、早く外出に慣れたくて頑張ってること、マダムは申し訳なさそうに歩きながら話してくれた。

私は聴くのに夢中になり、案の定迷った。

わー!ごめんなさい!道間違えた!って言ったら、今度はマダムはきれいな声で笑った。

その瞬間、私の肘から手が離れたけど、すごく自然に私達は腕を組んだ。

エスコート致します!って言ったら「お願い致します!」って言ってくれた。

私とマダムは見つめあって笑った。

確かに見つめあってた。

やっと銀座線に乗った。

銀座の駅前で娘さんご夫婦と合流。

マダムが「目が見えなくなって、聴覚と嗅覚が効くようになったの。メグミさんの香水、教えて欲しい。同じものを買って今日の思い出にしたい」と言ってくれた。

私は胸がいっぱいになって、シャネルの男物の香水、アンテウスです、アトマイザーに入れてるのがあるから、これ、持ってってくださいって言って、ボロボロのアトマイザーを渡した。

マダムは私に「ありがとう、御守りにするわ」って言いながら涙をひと筋流してた。

別れてから振り向いてぶんぶん手を振った。

娘さんが気づいてマダムに伝えてくれて、マダムも手を振ってくれた。

マダムをエスコートした時間は素敵だったけど、点字ブロックがちゃんと伸びてる方がもっといい。

そして銀のポッチのおしゃれ点字ブロックもやめて、わっかりやすくて最高な、真っ黄色の点字ブロックを街中ガンガンに引いちゃった方がもっともっとすっごくいい。そうなって欲しい。それだけ。