先日のご即位国民祭典で祝辞を述べた芦田愛菜さんの振袖

生成り(きなり)色に、「紗綾型」という文様に菊をあしらった「本紋」(ほんもん)と呼ばれる地紋。この紗綾型とは、「卍」を斜めにして連続的につなげた文様で、「家の繁栄」や「不断長久」「永遠」「長寿」を意味しており、特に武家に好まれた。光や見る角度によって陰影がつき、品格ある雰囲気を醸し出す。担当者によると、「きものの柄である菊の花は、花弁を手刺繍・縁を金駒刺繍(きんこまししゅう)で施し、豪華さを醸し出しています。また、全体的に匹田絞りと桶絞りでボリューム感を表現、朱色と緑の配色で、品のある色合いの中にも冴える印象を与えるものになっています」という。

金駒刺繍とは、高度な着物職人の技法の一つで、糸を木製の駒(糸巻きのようなもの)に巻いて転がしながら刺繍糸を這わせ、綴糸で留めていくもの。その中でも金糸を使ったものを「金駒刺繍」と呼ぶ。菊の文様自体も、美しく香り高い一面を表し、長寿を象徴する文様として知られているおめでたいものだ。帯も「斜子織(ななこおり)」と呼ばれる技法が用いられている格調高いものだ。京都や川越などが産地として有名で、光が当たると細やかな市松模様が浮かび上がるのが特徴とされる。「今回の振袖に合わせられた帯は、この織に『菱型正倉院文様』(ひしがたしょうそういんもんよう)」を施しており、日本の古典模様としては最古であり、格調高い文様として位置づけられます」(同前)まばゆいばかりの振り袖は、皇室の弥栄(いやさか)と国民の繁栄を願う意味が込められた大舞台にふさわしいものだった。