「どうしても一人では行けないところがあるからついてきて」
と友達に言われ、某超有名百貨店のフレグランスバーで立ちすくんだのは15歳の冬。
財布には1000円札しかない。
背中には塾の鞄。
そこは帰りの電車賃を気にしながら買い物をする私には明らかに場違いな雰囲気の大人の空間だった。— romi (@makkororin1) 2019年8月29日
完璧に雰囲気に飲まれながらもいつしか夢中になったのが香水の瓶。
「お母さんがジョイっていう素敵な香水を持ってて他のも見てみたくなったんだよね」とは誘ってくれた彼女。
すごい世界が都会にはあったものだと圧倒された。— romi (@makkororin1) 2019年8月29日
「つけてみませんか?」と店員さんに声をかけられた。
「ごめんなさい、見てただけなんです。素敵ですね」とあたふた。
店員さん「大丈夫ですよ。どんな香りがお好きですか?」
二人「好きな香り…?(わからん)」
店員さん「じゃあご紹介させてください」— romi (@makkororin1) 2019年8月29日
と持ってきてくれたのがエルメスのヴァンキャトルフォーブル。
「エルメスの住所が名前になってるんですよ。つまりエルメスを背負ってるんです。プライドの香りだと私は思ってます」
嗅いでみるとズッシリしつつ可憐な花が香る奥行きのある香り。
もちろん、今までの人生では出会ったことはなかった。— romi (@makkororin1) 2019年8月29日
「ダイアナ妃もご愛用とのことです」
当時お仕着せのプリンセスを捨てて、自由奔放で颯爽とした新しい女性のアイコンであったダイアナ妃はまさに「プライド」を盾に戦ってるんだ…とグッと来たところで
「ムエット差し上げます。お気に召したらまたいらしてください」と。— romi (@makkororin1) 2019年8月29日
帰り道、二人で「これが似合う女になってから来いってことだよね」と肩を落とした。
つまり私達は世界一華麗な門前払いをくらったのだ。
ブランドや香水の価値を落とさず、私達にレディな接客をすることで招かれざる客であることを悟らせる。
さすが新宿の百貨店戦争の勝利者たる貫禄だった。— romi (@makkororin1) 2019年8月29日
その後数年間、私の化粧ポーチの小さなポケットにはヴァンキャトルフォーブルのムエットが入ったままだった。
これに相応しい女になる、という目標を忘れないように。
そのムエットを捨てさせたのはあのダイアナ妃の事故だった。— romi (@makkororin1) 2019年8月29日
事故の時もあの香りだったんだろうか。
そんな不謹慎なことを考えながら聞いたエルトン・ジョンの「candle in the wind」
そうか、あの方はただの一輪の薔薇だったんだ。
もしかしたら「プライド」の香りは重かったのかもな。
自分より大きいものを背負ってしまったのかもしれないとも思った。— romi (@makkororin1) 2019年8月29日
これが私の香水にまつわる一番いい思い出。
香水を売る方、どうか夢とストーリーを一緒に売ってください。— romi (@makkororin1) 2019年8月29日