競走馬の安楽死について


おはようございます。ITです。

昨日のシャケトラ安楽死のニュース対して、SNS上で批判的なコメントされてる方が多々いらっしゃるのでとても残念な気持ちです。残念というか、憤りを覚えるというか…

批判的なコメントされてる方の多くは 『簡単に殺して…』
『骨折だけで殺すとか…』
『馬じゃなくて人間だったら殺さないのに…』
『金のために走らされて使えなくなったら殺すとか…』 などなど酷い言葉ばかりで。

こういう方々は、何故動物の立場には容易に立てるのに、その馬に関わる『人』の立場には立てないのでしょうか…
同じ人間の気持ちになる方がよっぽど簡単だと思うのですが…

批判している貴方は動物、好きですよね?

馬に関わる人だってみんなそうです。
馬が大好きなんですよ?

貴方より馬の世話をしていますし
貴方より馬への知識もありますし
貴方より馬が好きな自信も自負もありますし
貴方より馬のことを毎日考えているのです

そんな方達が、もう『安楽死するしかない…』って、’苦渋の決断で’安楽死の処置をしているのです。

どうしてそれがわからないのでしょう…
想像もしないのでしょうか…

私には批判している人達の方がよっぽど酷い人間に思えますよ。

飼っていたペットが死んでしまった友人がいるとして、貴方は 『なんでもっとちゃんと世話してやらなかったんだ』
『自分の身勝手で飼ったのに死なすなんて…』 などの酷い言葉をかけるのですか?
貴方が批判しているその言葉は、それと同等ですよ。 …すみません、どうしても自分の心の中だけに留めておけなかったので書かせていただきました。
そしてここからが本題で、では何故骨折で安楽死しなければならないのか、です。

理由は、簡単にいうと
『馬は歩けないと生きていけない』
からです。

馬は身体がとても大きい動物です。それ故に、心臓の働きだけでは全身の血流が上手くいきません。
その助けをしているのが、脚なのです。馬の蹄は裏面が柔らかくなっており、着地するときに広がり、地面を離れるときに収縮する、この作用を繰り返すことでポンプのような役割をしており、この作用により、古い血液を心臓に戻しています。これを『蹄機作用』と言います。

蹄機作用が正常に働かなくなるとどうなるか、勘の良い方ならわかると思いますが、古い血液が徐々に脚に滞るようになってきます。
自分の指に輪ゴムを巻いておくと徐々に指先が鬱血して青くなってきますよね?あの状態が馬の脚で起こるようになってきます。当然、骨折とは別の症状が出てきます。
そして当然それは痛みを伴うものになってきます。
結果、馬にとって痛い箇所が増えるだけ。そのまま悶え続け、餌も食べられなくなり、動く気力もなくなり、ただただ苦しみ続けて最期を迎えることになります。

では、馬を寝かせておいたら?
これもダメです。下になっている部分が自身の体重に耐えられず壊死してきてしまいます。馬は寝たまま寝返りをうつことが困難(できる子もいますが)なので、一旦立ち上がって反対側を下にする必要があります。故に、骨折している脚では上手く立ち上がることが出来ない為、寝かせておくこともできないのです。

もし人間なら、言葉が通じますので『安静にしていてください』
の一言でいくらでも治療が進みます。

犬や猫は言葉は通じませんが、身体が軽い為、こちらもいくらでも治療のしようがあります。

でも、馬はそうはいかないのです。

蹄機作用があることを、馬自身は知りませんし、伝える術もありません。
痛いから動かない、もしくは痛いから暴れる、しかできないのです。
そしてその先に待つのは症状の悪化しかありません。『現状維持』すらできないのです。確実に、『悪化』の道しかありません。

自力で脚を着ける程度の骨折であれば、治療を選択するはずです。事実、今回安楽死の処置をされたシャケトラは、骨折から復帰していますから。

今回は、そうではなかった、ということです。

随分長くなってしまいましたが、これが、馬が骨折したときに安楽死の処置をされる理由です。

どうか知識として知っておいてください。
そしてどうか、馬屋で働く人達の気持ちを軽視するような発言はしないでください。

誰よりも、 『安楽死なんてさせたくない、助けてやりたい』

って思っているのに、それが出来ないことを知っているし、受け入れなければならないのですから

どうか、よろしくお願い致します