奈良市神殿にある生活困窮者に優しいとんかつ屋さん


私は、お金で困っている人に頼まれてお弁当を差し上げていたことがあります。その人は、甘えてしまったのか要求が少しずつエスカレートしていったので、さすがに注意したら、お店にほとんど来なくなりました。別の人で、後日きちんとお金を払ってくれた人もいました。本当に意味のあること、その人の役に立つことができたのか、今でも私にはわかりません。もっと私が勉強していたら、別の方法でその人を助けることができたかもしれません。

今の私は、正直、自分のお店のことで精一杯です。2店舗目も、3店舗目も出していきたいという夢もありますので、これからもしばらくは余裕などないと思います。でも、それを理由にあまり負担にならない範囲での出来ることすらしないのもどうかな、といろいろ考えましたので、とりあえず、自分が出来る範囲のことをやらせていただきます。

「まるかつ無料食堂」を実施するにあたっては、私の一人よがりにならないように信頼できる人に相談しました。もしかしたら、私の想像力を超えた迷惑がどなたかにかかるかもしれませんので。たとえば、ほかの飲食店さんに無料で食事させろ、とか。もちろん、そういう風潮になることも望んでいません。

各地の「子ども食堂」の現実、孤食が原因のさまざまな社会問題などがあることなど、まだまだ浅いですが私なりに勉強しました。子どもだけではなく、大人、高齢者の貧困なども問題視されています。自助努力が足りないと切り捨てるほど社会はまだちゃんとは出来ていないはずです。どうにかしようと本当にたくさんの人が努力されています。こんな私でも、きっと何もしないよりはいいかもしれないと思いました。今ある社会のセーフティーネットで拾いきれないことが、無料食堂で拾えるかもしれませんし。

料理人としては、食べていただけることは掛け値なしにうれしいことです。お腹が落ち着けば元気も出るかもしれませんし、少しは前向きな気分になれるかもしれません。他人を信頼して頼ってみようという気持ちになるかもしれません。その最初の一歩になったりできたらうれしいです。スタッフも同じ気持ちでいてくれると思っています。お客さんにも理解してもらえると思っています。

いつまで続けられるかわかりませんし、だれの役にも立てないかもしれませんし(困っている人がいないということですからその方がいいですけど)、どうなるかわかりませんが、皆さまのご理解をお願いします。長々と言い訳がましくすみません。真意を説明しておく必要があると思ったからです。

もちろん子どもだけではなく、大人でも構いません。まるかつ無料食堂は364日(たぶん)営業しています。もしよかったら、いざというときのために心のどこかに置いておいてください。