女性裁判員の温情判決 被害女性の心情は…

「ねえねえ、お姉さん。おちんちん、触ってくれよ」
 周囲に人けがないのを見計らった男は、帰宅を急ぐ20代の女子大生に、背後からこう声をかけた。次の瞬間、抱きついて女性を押し倒した男は、馬乗りになり、胸をもみしだき、下半身にも手を伸ばした。ここに至って女性が悲鳴を上げ、手足をバタバタさせて抵抗すると、男は慌てて逃げ出した。
 逮捕されたのは、東京都狛江市に住む会社員・信太龍也容疑者(30)。当初は、「足がもつれて転んだ。触ろうとはしていない」と容疑を否認していたが、最近になって犯行を認め、動機も含めて詳細に供述するようになったという。
「女房が、仕事と小さい子供の子育てに忙しく、まったくやらせてもらえず欲求不満でした。亀有駅で女性を見たとき、一目で好みの女性だと思いました。それでずっと後をつけ、のし掛かってしまいました」(信太容疑者の供述)
 一方、被害女性は見ず知らずの男から「僕のチンチン触って」と声をかけられ、胸をもまれ、けがをするなど心身に大きな傷を負った。強い処罰感情を持つ。
 6人の裁判員はすべて女性だ。同性として妻と被害者の双方の気持ちを理解できるはず。だが最後は、”温情判決”と言える執行猶予を与えた。家令和典裁判長は「裁判員の皆さんと熱心に議論した」と明かし、代表して総意を被告に伝えた。悪質ながら短絡的であり、示談交渉中である点と、妻や実父が更生への協力を証言した点が考慮された判決だった。